訪問日記

中学校 市講師研修会 1

公開日
2017/06/20
更新日
2017/06/20

研修会等報告

 6月12日(月)市中学校市講師研修会が西中学校を会場に開催されました。市内各校から13名の先生方が参加され、授業参観及び事後研修会がもたれました。
 公開授業は、西中学校の教務主任でもある窪田浩晃教諭が、3年生の社会科の授業を公開してくださいました。題材は歴史的分野「日本の独立〜平和条約と安保条約」です。
 窪田先生は、挨拶が終わると生徒全員を黒板の前に集め、拡大コピーをした「主権回復の日」の新聞記事を見せて、思ったこと、感じたこと、気づいたこと、疑問に思ったことを尋ねました。生徒から、「『希望と決意の日』と、『屈辱の日』の意味がわからない。」「なぜ沖縄にとって屈辱なの?」という疑問が出されると、今日はこのことについて考えようと投げかけて授業がスタートしました。生徒から「なぜ?」「どうして?」「知りたい!」という思いを引き出して、これを追究の意欲につなげていきます。(インパクトのある資料提示です)
 生徒たちは、席に戻り、4人班にして考え始めます。ここで先生は、個々に2つの条約についての基本的な内容を押さえるためのワークシートを配布し、その記入状況を見ながら、さらに「平和条約の調印国と未調印国」と「沖縄を知ろう」の資料を班に配布し、ソ連が調印を拒否した理由も併せて考えるように指示しました。
 生徒にとっては、国内外の情勢を合わせて見ていく必要があり、心地よい午後の時間を考えるとかなり難易度が高い活動だと思われましたが、各自丹念に資料を読み込み、ホワイトボードに自分の意見を書いて、班の仲間に説明していきます。
 それでも班によってバラツキがある様子を見て、先生は「他班に行って説明を聞いてもいいよ。」と、班内で説明ができている班やボードにきちんと説明がされている班を紹介して、聴きに行くことを促します。仲間に囲まれた班の班員は、自分たちの考えをわかりやすく伝えようと一生懸命説明します。聴く側も理解しようと真剣に耳を傾けています。
 「生徒は、先生の(上手な)説明より、(上手くなくても)仲間の説明の方をずっと真剣に聴くもの」だと窪田先生は話します。窪田先生は「まとめ」をしません。そのことを知っている生徒は、だから仲間の説明を真剣に聞くし、必要なことは自分でノートにメモします。
 ここまで37分。ここで二つ目の問いを発します。「振り返り用紙を出してください。この2つの条約をどう思いますか。自分の考えを書いてみて。」
各自が、戦後の日本の歩みを振り返りながら、そして今日の資料の中で知ったこと、感じていたことを文字にしていきます。先生は、ペンが進まない子を支援しながら、たくさん書けた子を褒めていきます。残り3分。6人の生徒を指名し、発表させます。
 以下、長くなりますが紹介します。

(Fさん)「戦争の状態を終結することができたし、沖縄を犠牲にしてでも日本の主権を回復することができたので、どちらかといえばよかったと思う。更に、日本は防衛力が強化されることが期待されるし、日本とアメリカが手を組めば、もっと強くなって日本がいい方向に進むと思う。日本が損したことは沖縄を犠牲にしたことと、賠償金以外は何もなかったので、どちらかといえば良かったと思う。」
(Iさん)「サンフランシスコ(平和条約)は、連合国と完全に戦争が終わったということになるから、もう人がたくさん死ぬことも戦うこともないし、平和に向かっていけるからいいと思う。日米安全保障条約は、今までさんざん沖縄戦で人を殺してきたくせに、よく日本を守るなんて言えるな、と思う。しかもアメリカは日本のためと見せかけて、支配を続けたり、強制的に基地をつくったりして、結局アメリカのためだけだな、と思いました。」
(Rさん)「僕は良かったと思う。理由は、サンフランシスコ平和条約を結んで、日本は共産主義に染まることはないので、またアメリカと戦うことはなくなり、さらに日本の主権は回復して、日米安保条約でアメリカと同盟関係になったので、各国は日本を攻撃したらアメリカも敵になると考えて、日本と争うことはなくなり、そうすると第二次世界大戦で日本が受けた傷をいやすことができるからです。」
(Nさん)「日本本土にとってはいいかもしれない。本土の主権が回復し、占領もされなくなるから。しかし、沖縄はアメリカの資本主義を広めるために共産主義から日本を守ろうという考えによって、まだ基地は残っている。このようにどこかが嫌な思いをするような条約は良くないと思う。」
(Oさん)「それぞれ2つの条約で、日本本土は独立して良かったけど、沖縄は切り離されてアメリカの占領・支配が続いてしまったからどちらともいえない。けど、アメリカと条約を結んだことでソ連などは攻めてこられないし、戦争状態が終わっているから日本全体でみればいいけど、沖縄の人たちは良くないんじゃないかと思う。」
(Tさん)「日本全体でみれば2つの条約はとても良いことだと思う。理由は、主権も回復したし、米軍が日本に留まるだけでも心強くなるからです。しかし、沖縄の人の立場から言うと、沖縄戦が甦るかのようにアメリカ軍はいるし、まだ日本国に戻れなかったから、日本全体でみるか、沖縄でみるかによって、良いか悪いかは変わってくると思います。独立も出来たし、同盟を組んだり、国際社会に復帰できたけれど、今も沖縄には米軍基地が残るなど、今現在まで影響しているからです。」
 
 生徒たちは、日本が占領から独立し、主権を回復したことと、冷戦の中でアメリカ側に組み込まれたこと、そして沖縄はアメリカの占領下のままで多くの基地が置かれたことなどを考えながら、それぞれ自分なりの見方・考え方を示しています。その見方の背後にはその子らしさが表れています。「あの子はあんな風な見方をするのか。自分とは考え方が違うけど、そういう見方もあるな。」「沖縄の人の立場に立って考えることも必要だな。」・・・。
 今日の題材は、今につながる題材でした。そしてその子なりの見方、考え方が表出してくる題材でした。こんな題材こそ、自分と関わらせて考えさせたいものです。「この6名の人の考えを聞いて、みんなはどう思うかな。もう一度班で話し合ってみよう。」
 新学習指導要領でうたう「主体的、対話的な深い学び」とはここからの学びなのかもしれません。歴史学者トインビーは歴史を学ぶ意義について「歴史は、過去と現在との対話である」と言っています。今日の授業はそんな一コマが見られた授業でした。
 最後に、事後研修会の挨拶で風間忠純教育長が、次のようにお話しされました。「今日の授業では、最初の生徒の表情と、最後の生徒の表情が大きく変化しました。なぜそんなに大きく変化したのか、この後の研修で明らかにしていってください。私は、沖縄の立場に立って考えてくれた子がいてホッとしました。」教育長さんのお人柄が表れた一言だなと思いました。 

<参加者の振り返りアンケートから>
・生徒の声(考え)で学びを深めていく授業に感動しました。ホワイトボード・ワークシートなどの使い方、振り返りの生かし方も参考にさせていただきたいです。
・「子どもの問いを課題に、生徒の脳を使った授業」ということで、とても勉強になりました。先生の説明が主ではなく、生徒たちが自分で考え、グループで話し合い、再度自分の考えでまとめる流れは、とても参考になりました。そして最後に必ず生徒をほめるということも、これからの授業に活かしていきたいです。
・教師がたくさん話さなくても、生徒が自分たちで動けるのは、先生が今まで築いてきたものと、生徒たちの見とりがよくできていたからだと思います。自分もがんばっていきます。


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