学校日記

2月の全校集会(ワグナーとバレンボイム)

公開日
2011/02/02
更新日
2011/02/02

校長室から

 2月になり、寒い日が続きますね。3年生は明日が私立の受験日、最後の追い込みです。体に気をつけながら、しっかり頑張ってください。私は先日の休みの日に庭の手入れをしました。たっぷり肥料を入れたり、バラの枝の剪定を行いました。バラは今頃から新しい芽がふくらみ始めます。ですから、その芽に沿って枝を切っていきます。切った方向に枝が伸びていくわけですが、まさに今の3年生と同じですね。バラも人間も寒いこの時期がとても大切なんですね。
 さて、先日生徒会の「ふじいばら」が配布され、今聴きたい曲、好きなアーチストが載っていました。当然、嵐やAKB48が入っていましたが、3年生にラドウインプスというグループが入っていました。初めて聞いた名前でしたので3年生にCDを貸してもらい聞いてみました。なかなかおもしろそうなグループでした。1年生にマイケルジャクソンが入っているのが意外でうれしかったです。私は前に言ったように体が自然に動いてしまうようなロックっぽいのが好きですが、最近はアギレラやレディ・ガガなんてのを通勤の車の中で聞いています。知っていますか?
 今日は別のジャンルの音楽の良さも紹介したいと思います。今から70年くらい前、みんなのおじいさんやおばあさんが子供だった頃、ドイツではヒトラーが独裁国家を推し進めていました。ヒトラーは経済的不況が続き生活が大変なのはユダヤ人がいるからと強制収容所に送り、約600万人をガス室等で虐殺しました。ユダヤ人はそのころ自分の国がなくいろいろな国に散らばって暮らしていました。ドイツにもたくさんいました。しかし、有名な人はたくさんいます。20世紀の人類に大きな影響を与えた偉大な3人は全員ユダヤ人です。一人は社会主義を考えたマルクス。今の中国や昔のソ連はその影響でできました。もう一人は心理学で無意識の世界を考えたフロイト、あと一人は相対性理論のアインシュタイン。水爆を可能にするなど物理学で大きな影響を与えました。ユダヤ人はこの戦争後いろいろな国からパレスチナの地に帰り、イスラエルという国を作りことになります。
 この写真を見てください。そのヒトラー率いるナチス党の大会の写真です。すごいでしょ。人で埋まっています。そのときに流れた曲が『ニュルンベルクのマイスタージンガー』前奏曲です。この曲です。どうですか?いい曲でしょ。ワーグナーという人が作曲しました。よく親しまれ、式典での演奏機会も多い曲で、テレビで着物のコマーシャルでも使われています。みんなの中にも聞いたことがある人がいるかもしれません。
 ワーグナーは、オペラで知られる19世紀のドイツの作曲家です。音楽界だけでなく19世紀後半のヨーロッパに大きな影響を及ぼしました。ヒトラーもワグナーの大ファンだったため、ナチスに利用されることになりました。ヒトラーがユダヤ人を大量虐殺したため、そのヒトラーが利用したワグナーはユダヤ人の敵となってしまいました。そのためイスラエルではワーグナーの作品を演奏することはタブーだったのです。
 しかし、戦争が終わってから50年以上たった2001年、バレンボイムという人がイスラエルの首都エルサレムで、ワーグナーを初めて上演しました。場内は騒然となり、バレンボイムは数名のイスラエル人から罵られました。バレンボイムは最初、ワーグナーを上演する予定でしたが、イスラエル政府からの強硬な抗議でプログラムの変更させられました。しかしコンサートの終わりになって、アンコールとしてワーグナーを演奏すると告げました。多くの聴衆は、高らかな拍手をもって応えましたが、若干の少数者が、声を上げて反対しました。バレンボイムは30分をかけて、聴衆に向けてヘブライ語で、ワーグナーの楽曲をとり上げる理由を述べ、反対派には、とにかく音楽を聴いてくれるように説きました。「私は先週、携帯電話の着メロで会議を中断させられました。その着メロはワーグナーの『ワルキューレの騎行』です。携帯にワーグナーを使えるなら、どうしてコンサートホールでワーグナーを聴いてはならないのですか?」
バレンボイムはアルゼンチン出身のユダヤ人指揮者です。国籍はイスラエルですが、今も正しいと思うことを主張しています。
 みんなはどう思いますか?音楽にも意味があります。その奥にある意味を知るとまた違った感覚で聞こえてきます。勉強に疲れたとき、たまにはクラシックをしんみり聴くと心が癒されますよ。

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