学校日記

スミレ

公開日
2012/04/16
更新日
2012/04/16

校長室から

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河川清掃を行った日曜日、堤防沿いの土手に咲くスミレの花をみつけました。

菫(スミレ)程な小さき人に生れたし

この句の作者である夏目漱石は、明治維新前後の激動する時代に作家として活躍し数々の名作を残しましたが、その生涯においてすべてが順調だったわけではありません。
彼は大学を卒業後、教員として英語教育に携わります。その後、国の命を受けイギリスに留学する機会を得ますが、精神的に疲れ、英語研究に対する自信を失って帰国することになります。彼はこの苦しい時代に上記の句を作り、自らの人生を切り開く決意を新たにしました。
スミレは可憐で、慎ましやかな花ですが、アスファルトや石垣のちょっとした割れ目にも咲くたくましさをもっています。
私はこの句と向き合うとき「人間は、不器用であっても世間に認められなくても、自分に忠実に生きるしかない。」というメッセージを感じます。もう少し深く考えてみると「世の中の風評などは気にせず、仮に挫折を経験しても自分をしっかりと見つめ、自分を信じて生きていこう。何よりも自分自身が納得する生き方を貫こう。」ということになるでしょうか。
今の時代は、多くの情報にあふれていて必要な情報を短時間で入手できるため、物の見方や考え方が多様化し、ともすれば自分の本当の姿、自分に適した生き方が見えにくくなっているのが特徴のひとつです。
漱石が目指した生き方は簡単なものではなく、これを貫くためには意思の強さと相当の決意を必要としますが、このような世の中だからこそ、自分の信念に基づく生き方として参考にしたいと思います。